教育DXの具体的な事例は?取り組み内容や導入時の課題も解説
教育現場では、デジタル技術を活用した学びの変革を進めています。特に「教育DX(デジタル・トランスフォーメーション)」は、単なるデジタル化にとどまらず、教育のあり方そのものを変える取り組みです。文部科学省も、小中高や支援学級を対象に、1人1台の端末と高速ネットワークを提供することによる、個別最適な学びと協働的学びの実現を目指す「GIGAスクール構想」や、高等学校の生徒を対象として、次世代のデジタル人材を育成することを目的とした「DXハイスクール(高等学校DX加速化推進事業)」を推進し、ICTを活用した学習環境の整備を進めています。
当記事では、教育DXの概要やデジタル化との違い、具体的な取り組み、導入事例を詳しく解説します。教育DXによってどのように学びの可能性を広げられるのか理解することで、より教育DXを効率的に進められるでしょう。
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1. 教育DXとは?
教育DXとは、学校や教育現場においてDX(デジタル・トランスフォーメーション)化を促進し、教育において、新たな価値の創造が行われることです。
教育DXには、手段と目的の2つの視点が存在します。手段としてのDXは、デジタル技術を活用し既存の業務における効率化と最適化を図ることです。たとえば、電話連絡と紙の出席簿への記入で行っていた生徒の出欠状況の記録を、連絡フォームと表計算ソフトの連携により、電子データとして管理し、自動化するといった事例が挙げられます。
目的としてのDXは、ツールやデバイスを活用して学校教育に新たな体制を構築し、児童生徒のさらなる学びへつなげることです。児童生徒がタブレットやパソコン(PC)といったデジタルデバイスを用いて、これまでにないアウトプットができる状況を作り出すなど、DXによる学びの形は数多く想定されます。
1-1. 教育のデジタル化との違い
デジタル化は、DX化における第一段階の「デジタイゼーション」にあたります。教育のデジタル化は、教育の場においてこれまでアナログの手法で行っていたものをデジタル的な手法へと切り換えることです。プリントをPDFファイルにして、共有フォルダを介して関係者に送ったり、ノートへの筆記をタブレットに置き換えて、宿題をプラットフォーム上から提出したりする行為がデジタル化の一例です。
第二段階の「デジタライゼーション」では、こうしてデジタル化されたデータやデジタル技術を活用し、教育活動や業務プロセスそのものを効率化・高度化していきます。たとえば、成績管理や出欠管理を自動化したり、オンラインで双方向型の授業を行ったりする取り組みがこれにあたります。
第三段階である「DX」においては、第一・第二段階をふまえ、学習データの収集と分析により教育の質向上を支援したり、デジタル技術の活用によって、地域や経済状況を超え、すべての生徒が質の高い教育を受けられる環境を実現したりすることで、教育現場に変革を起こすことを目指しています。
2. 教育DXが求められている背景
教育DXが求められる背景には、社会構造や学習環境の大きな変化があります。少子高齢化による人口減少が進む中で、限られた人材を最大限に活かす教育の重要性が高まっています。さまざまな課題に対応するため、教育DXは学校教育の質を高める手段として注目されています。
ここでは、教育DXが求められている背景について詳しく解説します。
2-1. 人口減少社会に対応する人材育成
日本は少子高齢化と人口減少が同時に進行しており、限られた人材で社会を支える必要があります。そのため、子ども一人ひとりが将来にわたり社会で価値を発揮できる力を育む教育が求められています。
変化の激しい時代では、知識の量だけでなく、課題を発見し解決する力や、他者と協働する力が必要です。教育DXは、ICTを活用して探究的な学びを支え、社会課題と結び付けた学習を可能にすることで、人口減少社会に対応できる人材育成の基盤となります。
2-2. 一人ひとりに合った学びへの対応
学習指導要領では、児童生徒の資質や能力を3つの柱で育成することが示されていますが、従来の一斉授業だけでは個々の理解度や特性に十分対応できない課題がありました。
ICTを活用すれば、学習履歴や理解度のデータを基に、学習内容や進度を調整することが可能になります。教育DXが求められる背景には、すべての子どもが自分に合った方法で学び、学習の遅れやつまずきを早期に把握できる環境の整備が急務だという現状があります。
2-3. 地域や家庭環境による教育格差の是正
地域間や家庭環境の違いによる教育格差は、以前から指摘されてきた課題です。人口減少や高齢化が進む地域では、学習機会や人的資源が限られる傾向があります。教育DXは、ICTを通じて教材や指導を共有し、地域の制約を超えた学びを実現する手段として期待されています。
また、家庭の事情により十分な学習支援を受けにくい子どもに対しても、オンライン教材やデジタルツールを活用することで、学習機会を保障する効果が期待できます。
2-4. デジタルネイティブ世代に合う教育の実現
現在の子どもは、幼少期からスマートフォンやタブレットに親しんできたデジタルネイティブ世代です。そのため、紙教材と板書を中心とした従来型の授業では、学習意欲や理解度が十分に高まらない場合があります。教育DXには、子どもたちの生活環境や認知特性に合った学習方法を提供することが求められています。
デジタル技術を前提とした教育環境を整えることで、学習への主体的な参加を促すことが期待されています。
2-5. オンラインを活用した学習機会の拡大
感染症の流行や災害時において、学校に通えない状況でも学びを継続する重要性が明らかになりました。オンラインを活用した学習は、時間や場所の制約を超えて教育を提供できる点で不可欠です。教育DXが求められる背景には、非常時だけでなく、長期欠席や病気療養中の子どもに対しても学習機会を確保できるという特性も大きく関係しています。
ICTを基盤とした教育体制を整えることは、学びを止めないための重要な社会的要請です。
3. 文部科学省が推進している教育DXへの取り組み
教育DXは国策として推進されている取り組みです。文部科学省では、教育分野におけるDXとして、初等中等教育においては端末更新や利活用のフェーズに入った「GIGAスクール構想」を、高等教育ではDXハイスクール事業などを通じたデジタル人材育成を推進しています。
ここでは文部科学省が推進するそれぞれの取り組みについて詳しく解説します。
3-1. 初等中等教育
GIGAスクール構想で行われている主な取り組みは、以下の4つです。
●児童生徒1人1台端末の整備
児童生徒がそれぞれ端末を所持し、授業および自宅学習で活用できる状態を目指して整備が進められました。現在は端末の更新や利活用のフェーズに入っています。端末の整備に伴い、各教室への充電キャビネットの設置も完了しています。
●校内通信ネットワークの整備と高速化
校内LANを整備し、授業でスムーズなICT活用が行える環境を構築する取り組みです。また、Wi-Fi環境が整っていない家庭へのルーターの貸与なども行われています。
●教員のICTスキルの向上
教員がPCやタブレットを用いた授業を円滑に行えるよう研修を行う取り組みです。生徒への基本的な端末操作を教授するための指導力の向上も含まれます。
●ソフトウェアの活用
デジタル教科書をはじめとするデジタル教育コンテンツの活用や、文章作成ソフト、プレゼンソフトなどの活用を推進する取り組みです。児童生徒自身に端末を十分に活用する力をつける目的があります。
3-2. 高等教育
高等教育は、高等学校および大学における教育のことです。デジタル技術やDXを担う人材の育成と、教育の高度化・DX推進を目的として、高校ではDXハイスクール事業、大学ではScheem-D(スキーム・ディー)が取り組みとして推進されています。
DXハイスクールでは、ICTを活用して探究的な学びを強化することを目的に、申請のあった全国の公立および私立の高等学校が採択され、現在も約1,000校規模で支援が継続しています。採択校には、デジタル人材を育てるための具体的な取り組みとして、たとえば情報IIや数学IIIおよび数学Cなど理数系科目のカリキュラムを充実させることや、デジタルを活用した文理横断的、探究的な学びの実施、専門高校におけるスマート農業やインフラDX、医療・介護DXなどに対応した高度な専門教育の実施と、高大接続の強化が求められています※。
補助金の主な活用方法はハイスペックPCや3Dプリンターなどの設備整備や、理数分野などの専門人材の招へいが挙げられます。あわせて、遠隔授業用の通信機器の整備なども含まれます。
Scheem-Dではデジタル技術を活用し、大学の特色や強みを活かした先導的な教育プログラムの実現を目指します。教員だけでなく学生や企業とも連携し、ピッチイベントなどを通じて新たな教育アイデアを検証、発展させ、ほかにない学びを模索することが特徴です。特定の分野に限らず、学習者本位の視点から、高い学習効果と主体的で対話的な深い学びを実現することを目標にしています。
※ 採択校に求める具体の取組例(基本類型・重点類型共通)の一部
出典:文部科学省「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」
出典:文部科学省「大学教育のデジタライゼーション・イニシアティブ(Scheem-D)」
4. 教育DXの具体事例は?
教育DXと一言で言っても、その取り組みやアプローチは学校によってさまざまです。各校が抱えていた課題と、解決方法を知ることで、教育DXへの理解をより深めることができます。
ここでは実際に小・中学校や高等学校で行われている教育DXの推進策と、その成功事例を紹介します。
4-1. 春日部共栄中学高等学校
春日部共栄中学高等学校では、「未来を築いていく人材の育成」を教育の軸に据え、ICTを活用した教育DXを推進しています。全生徒にセルラーモデルのChromebookを導入し、家庭の通信環境に左右されない学習環境を実現しました。これにより、オンライン授業や校外学習、探究活動を同一条件で行える体制が整っています。
また、将来の大学進学や社会での活用を見据え、キーボード入力を重視した点も特徴です。授業ではディスカッションや共同編集を積極的に取り入れ、生徒の主体性を引き出しています。さらに、中学・高校で段階的にプログラミング教育を実施し、教員も研修を通じてスキルを高めています。
ICT活用のルールは最小限にとどめ、生徒の自主自律を育む点も、同校の教育DXの大きな特徴です。
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4-2. 横浜女学院中学校 高等学校
横浜女学院中学校・高等学校では、「グローバル教育」と「イノベーション教育」を実現するため、幅広いICT機器を導入しています。WindowsPCや電子黒板に加え、3Dプリンターやドローンなどの先端機器を教育に取り入れ、生徒が新しい技術と出会う機会を重視しています。
同校では、自己受容力を高めることが学びの基盤になると考え、ICTを通じた体験が将来の進路選択を広げると位置付けています。いきなり全校導入を行うのではなく、トライアルを重ねながら段階的に展開した点も特徴です。
教員自身が生徒とともに学び、わくわくしながら活用を進める姿勢が、教育DXを学校全体に浸透させる原動力となっています。
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4-3. 学習院初等科
学習院初等科では、「本物に触れることを大切にする」という伝統的な教育方針とICT活用を融合させた教育DXを進めています。新型コロナウイルス対応をきっかけに、短期間で1人1台のタブレット環境を整備し、双方向のオンライン授業を可能にしました。
授業支援アプリケーションを活用した意見共有により、児童生徒全員の考えを可視化できるようになり、協働学習が活性化しています。この取り組みは、同校が大切にする「自重互敬」の精神とも一致しています。さらに、海外の学校とのオンライン交流など、授業外の活動にもICTを活用し、国際的な視野を育む学びを実現しています。
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4-4. 愛光学園
愛光学園では、学力向上と主体的な学びを両立させるため、早期からICT端末の1人1台環境を整備してきました。中学ではタブレット、高校ではChromebookと学習段階に応じて端末を使い分け、アクティブラーニングやプレゼンテーションを積極的に実施しています。
ICTの活用により、意見共有や資料準備の負担が軽減され、思考力や表現力を伸ばす授業が増加しました。また、校務支援システムの導入によって出欠管理や保護者連絡が効率化され、教員が生徒と向き合う時間の確保にもつながっています。ICTを教育の強みとして位置付け、将来に必要な学ぶ力の育成を目指しています。
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4-5. 新潟県立燕中等教育学校
新潟県立燕中等教育学校では、「つばくろ探究」と呼ばれる探究的な学びを中心に、教育DXを推進しています。数理、データサイエンス、AIの活用を前提とした学習を全生徒が履修し、新たな価値を創造できる人材の育成を目指しています。
大学と連携したデータサイエンス・セミナーや、3Dプリンター、3DCADなどのデジタル機器を活用した授業により、探究活動の質を高めています。さらに、非認知領域を可視化する評価手法を取り入れ、生徒の意識や行動の変化を分析しながら教育改善に活かしています。探究とデジタルを融合させた実践が、同校の教育DXの特徴です。
出典:文部科学省「DXハイスクール 取組事例 新潟県立燕中等教育学校 (公立・国際科学科)」
4-6. 大分県玖珠町立塚脇小学校
小さなデジタル化を試行し、校務にDXを導入する利便性を納得してもらうことで、教員から主体的にアイデアが寄せられるようになったのが塚脇小学校の事例です。
塚脇小学校では当初DXの導入に対して教員の多くが消極的でした。DXが校務の効率化に結びつくというイメージが、うまく共有できていなかったことが一因です。しかし、「とにかくやってみよう」という平原校長先生主導のもと、DX化が職員会議の資料のPDF化から開始されました。
小さなデジタル化をきっかけに、さらに発展したアイデアが教員から次々と寄せられるようになりました。教員のDXに対するモチベーションは徐々に高まり、今では多くの校務DXの取り組みに教員の意見やアイデアが反映され、業務効率化が進んでいます。
出典:文部科学省「大分県玖珠町立塚脇小学校 1人1台端末で変わる(変える)学校の風景~まずは校務DXから~」
4-7. 光塩女子学院初等科
光塩女子学院初等科では、PCではなくタブレット端末を活用し児童生徒の学習効率や保護者との連携の改善を行いました。
光塩女子学院の初等科では2020年度から1~4年生の児童生徒に1人1台端末としてタブレットを活用しています。英語や漢字の練習など特定の学習においてはタブレットではやりづらさがあるものの、国語や算数の反復学習がスムーズに行えるようになりました。タブレットを持ち帰り家庭内での学習にも用いているため、保護者が学習の進捗を把握できるようになったことも評価されています。
小学生のうちからICT活用に慣れておくことが、後の学習に有利に働くのではないかと期待されています。
出典:国立情報学研究所「私立小学校におけるGIGAスクール構想を超えたオンライン授業を含むICT教育への取り組み」
4-8. 常翔啓光学園中学校・高等学校
DXのハード面とソフト面のバランスに重点を置いて取り組んでいる事例です。
常翔啓光学園中学校では、早くから1人1台端末環境の整備を進めてきました。同校はハード面が充実した段階で、DXの成果をいかに生徒に還元できるかを重視し、技術の習熟などソフト面の充実に力を入れています。教員に対しても専門家を招いた研修を行い、確かな指導力の養成を行っている点も特徴的です。
プログラミング講座の開講や、大学入学共通テストを見据えた情報Ⅰの授業内容の充実など、取り組みは多岐にわたります。今後は生成AIの台頭で目まぐるしく変革する社会に対応するために、教員も生徒も学び続ける学校として、学びの質の向上に取り組む方針を掲げています。
出典:School S-pot「『DXハイスクール』採択! 中長期的視野でデジタルリテラシーを高める」
4-9. 富士見丘中学高等学校
全生徒が効率的に履修に取り組めるよう高校3年間のカリキュラムにおいて段階的に情報関連の学習を行った事例です。
富士見丘中学高等学校では3年生で履修する情報IIを必修科目に移行する取り組みを行っています。そこでスムーズな授業を行うため、2年生で情報IIの先行的な学習プランを盛り込んだ選択科目を用意しています。また、複数教科でプログラミングやデータサイエンスに関わる実習を取り入れ、理数系科目への関心や理解を深める試みも行われています。
3Dプリンターや大型ポスタープリンターなどを授業で多用し、「ものづくり」体験を通じたICT学習で生徒の興味関心の醸成を目指す点も特徴的です。教科を超えた横断的な取り組みと、実践的な学習の場の相乗効果で生徒の学びをサポートしています。
出典:文部科学省「【概要・詳細】富士見丘中学高等学校 普通科(令和6年度)」
4-10. 宮城県宮城野高等学校
企業や大学と連携しデジタル技術を学ぶ機会を作ったり、デザインや表現等の分野におけるデジタル活用の方法を模索したりと実践的な特色ある取り組みを行った事例です。
宮城県宮城野高等学校には美術科があり、3Dプリンターや3Dスキャナーを活用したデザイン分野の学びに力を入れています。大学と連携し、社会で実践されているDXの例を学習する機会があり、単なる学習で終わらないDXのあり方を模索している学校です。
デジタル技術を用いた「バーチャル卒業制作展」や、生徒が小中学校に赴いて行うデジタルデバイスを用いた交流学習など、多様なアウトプットの場も用意されています。充実したデジタル設備を有効活用し情報化の著しい現代社会に対応できる実力の養成に取り組んでいる事例です。
出典:文部科学省「【概要・詳細】宮城県宮城野高等学校 普通科・美術科(令和6年度)」
4-11. 埼玉県立飯能高等学校
教員への研修を計画的に実行し、デジタル顕微鏡や生成AIを用いた学習環境づくりを進めている事例です。
飯能高等学校ではデジタル顕微鏡から得られた画像を用いて、解析法の習得やデータ分析の手法を学ぶ授業を展開しています。画像は生徒の1人1台端末に転送され、各自が解析サイトにアクセスして研究を深めることができます。また探究活動では生成AIを積極的に活用し、有用なデータやプログラムの作成に役立てています。
こうした取り組みの事前準備として、同校では生成AI利用における校内ルールの確立が行われました。あわせて、教員に対する機器の使用方法や統計学、生成AI技術の習得のための研修を計画的に実施したことも、取り組みを支える重要な要素となっています。
出典:文部科学省「【概要・詳細】埼玉県立飯能高等学校 普通科(令和6年度)」
5. 教育DXのメリット
教育DXの実現は、生徒と保護者側にとっても、学校側にとっても、さまざまなメリットがあります。ここからは、「児童生徒・保護者」、「学校」に分けて、教育DXがそれぞれにもたらすメリットを詳しく紹介します。
5-1. 学校側のメリット
教育DXで得られる学校側のメリットは以下の3点です。
●児童生徒にあわせた指導ができる
教育DXが進めば、児童生徒一人ひとりに対して学習データを用いた詳細な分析が可能になります。個別の課題や習熟度にあわせた指導がしやすくなり、より最適な学習内容と機会を提供できるようになるでしょう。
●事務作業の負担が減る
テストの採点や出席状況の確認はデジタル技術を活用することで時間短縮が実現します。他にも保護者への連絡をデジタル上で行えば、紙の印刷と配布の手間を省けるでしょう。教育DXは負担が大きいと問題視されている教員の業務を軽減できます。
●感染症をはじめ、あらゆるリスクに備えられる
感染症などを理由に授業ができない場合、1人1台端末とネットワークの環境があればオンライン授業への切り替えがスムーズに行えます。2024年からは全日制課程の高等学校において不登校状態にある生徒に対し、オンライン授業を利用した単位修得を一部認め、進級卒業を支援する制度も開始されました。
5-2. 児童生徒・保護者側のメリット
教育DXによって得られる児童生徒のメリットは以下の3点です。
●学習の最適化が可能
教育DXを進めることで、児童生徒一人ひとりの学習状況がデータ化され、教員は個々の得意分野や苦手分野を把握しやすくなります。児童生徒それぞれの状況に応じた学習指導により、つまずきの早期発見・解消にとどまらず、得意分野においては先取り学習や探究的な学びを促すなど、一人ひとりの資質・能力を伸ばす指導が可能となります。それぞれの習熟度や関心に応じたきめ細かな指導は、学習意欲の向上にもつながります。
●学びの機会や学べる環境が増える
ネット環境と端末があればどこでも教材に触れられるため、柔軟に学習の機会を設けることができます。音声や動画を用いた資料にもアクセスでき、学校外でも充実した学習環境を構築できます。
●学習の成果が見えやすくなる
教育DXを通じてデータを管理すれば、テストや模試などあらゆる成績データを一元管理することも可能です。年単位での成績の推移や学習状況を詳細に把握することで、児童生徒自身が成果を実感しやすくなるでしょう。評価の根拠がデータで示されることによる、納得感も増します。
教育DXがもたらす児童生徒側へのメリットは、学習環境や学習体験が飛躍的に充実し、より豊かな学びの機会を得られる点にあります。一方で、教育DXがもたらす保護者のメリットとしては、以下の2点が挙げられます。
●学習の進捗を把握しやすい
学習状況や子どもの得意分野、苦手分野がデータ化されれば、一目で状況を把握できるようになります。自宅でのサポートの参考にもなるでしょう。
●学校とのコミュニケーションを取りやすくなる
デジタルツールを用いた連絡手段であれば、仕事や外出中で学校からの電話に対応できないということも減らせます。欠席や遅刻の連絡もデジタルツールを使えば簡単に行えます。こうしたデジタル活用による保護者と担当教員の円滑なコミュニケーションの実現は、学校との信頼関係の醸成にも役立ちます。
6. 教育DXを進める際の課題
教育DXによってもたらされるメリットは数多くありますが、その推進にあたっていくつかの課題も存在します。教育DXへの理解を深め、オンライン教育についての方針を立てなければ、高額な設備投資が十分に活用されず、宝の持ち腐れになってしまうおそれもあります。
ここでは、教育DXが抱える主な課題とその解決の方向性について紹介します。
6-1. インフラの整備・維持にコストがかかる
1人1台端末を実現、維持するには端末のアップデートやメンテナンスが欠かせません。故障が生じれば修理費用が発生しますし、経年劣化による買い換えなどで、数年ごとにまとまった費用が発生する点も念頭に置く必要があります。
また、校内で高速ネットワーク環境を維持するには、毎月の回線費用などのランニングコストがかかります。実際に、通信速度や品質に課題を抱える学校も多く、一斉にログインしようとすると一部の端末でネットワークにつながりにくくなる、音声にノイズが入るといったケースも報告されています。
このように、インフラの設備と維持には継続的な費用負担が伴うため、導入前に中長期的なコストを見積もっておくことが重要です。補助金の活用を検討する際も、インフラにかかる初期費用だけでなく、その後のランニングコストまで見据えて計画を立てるとよいでしょう。
6-2. セキュリティ対策が必要
教育DXの推進にあたっては、インターネット環境の利用が不可欠です。文部科学省が策定したガイドラインでは、安心してICTを活用するために十分な情報セキュリティ対策を講じることが不可欠とされています。
たとえば、利用者のIDやパスワードの管理方法を決め、情報セキュリティに関する専門家からの支援体制を確立しておくなどの対応が求められます。
情報漏えいが起きると、生徒や保護者の安全にも影響が及ぶでしょう。不正アクセスやマルウェアへの感染防止はもちろん、情報を取り扱う教員に対しても情報リテラシーを高める取り組みが重要です。
出典:文部科学省「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和7年3月)
6-3. ネット上でのトラブルへの対策が必要
ネット上でのやりとりは教員や保護者の目が行き届きにくく、近年ではネット上でのコミュニケーションにおいてトラブルが発生するケースも増えています。不用意な個人情報の公開や、ネット上での誹謗中傷は起きてからでは対応が難しい場合もあります。
こうしたトラブルを未然に防ぐため、情報モラル教育が必要です。インターネットの安全な利用方法や、個人情報の取り扱い、著作権や肖像権など生徒の年齢にあわせた教育を行いましょう。不適切なコンテンツを表示しないよう閲覧制限をかけるほか、生徒たち同士でインターネットの活用方法を議論するなどのデジタル・シティズンシップ教育に取り組むことも大切です。
出典:総務省「家庭で学ぶデジタル・シティズンシップ~実践ガイドブック~」
6-4. 教員のリテラシー教育が必要
インフラや機器が整備されても、教育を担当する教員が使いこなせなければ、教育DXは成功とは言えません。教員が機材やソフトウェアをしっかりと活用できるよう、研修を行って活用方法を身につけることが必要です。転勤や退職で教員の入れ替わりが起きてもノウハウを引き継げるよう、マニュアルの整備も心がけましょう。
また、個人情報の取り扱いには一層の注意が必要です。安易にデータを扱わないことや、生徒による安全な利用を促せるようにするためにも、教育者には十分な情報リテラシーが必要です。リテラシー向上のためには、教育委員会などによる研修や、自治体内での情報共有が有効です。他校や企業の取り組みも参考になるため、自校の校内研修にとどまらず、外部との連携も積極的に行いましょう。
KDDI Biz EdgeではICTリテラシー向上を目的とした学校向け研修も行っています。基本的な端末の操作やセキュリティに関する知識などを身につけ、校内でのDXを導入したいという場合はぜひご相談ください。
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まとめ
教育DXの推進により、学習の効率化や個別最適化、教育の質の向上が期待されています。成功事例を参考にしながら、適切な運用と改善を重ねることで、学びの変革を目指していくことが求められます。デジタル技術の活用が進む今、単なるツール導入だけにとどまらず、教育の本質的な改革を見据えた取り組みが重要です。
KDDI Biz Edgeでは、学校・教育現場のDX実現を支援しています。KDDIの高品質でセキュアな通信と、タブレットやPCなどのスマートデバイスを軸に、豊富な知見とソリューションをワンストップで提供しています。ICT教育や教育DX推進についてお悩みの方はぜひお気軽にご相談ください。
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※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。







