「意識×環境」が組織の自走を生む。持続的成長を加速させるDXの本質
価値観が多様化する時代、「はたらく未来」の形も決してひとつではありません。連載「はたらく未来をどう変える?」では、KDDI Biz Edgeがさまざまな経営者や専門家との対談を通して、これからのビジネスの最前線がどのように進化していくのかを描き出します。
第一回では、ドリーム・アーツの山本孝昭氏を迎え、デジタル化によって生まれた「余白」をいかに顧客価値へ転換するか、その事業改革のあり方について語り合いました。
続く第二回となる今回は、組織のエンゲージメント向上を科学的に支援するリンクアンドモチベーション代表取締役社長の坂下英樹氏が登場。単なる「効率化(デジタル化)」に留まる現状をどう打破し、「真の変革(DX)」へとつなげるのか。組織に染み付いた「現状維持」の空気を塗り替え、自走させる鍵となるのは、働く人の「意識」とそれを受け止める「環境」の相関関係に他なりません。KDDI Biz Edge代表取締役の落合孝之とともに、「人への投資」の実践論を通して、組織が真に進化するための道筋を解き明かします。
連載企画「はたらく未来をどう変える?」とは
本連載では、KDDI Biz Edgeが有識者との対話を通じて、「はたらく未来」を切り拓くヒントを探ります。また、私たちにできる未来に向けた「第一歩」とは何か、その具体像を議論していきます。事業改革や最先端技術はもちろん、次世代のリーダーシップや組織論、オフィス設計、福利厚生など、多岐にわたる切り口からビジネスの可能性を展望。KDDI Biz Edgeが掲げるスローガン「はたらく未来を変えていく。」----その実現に向けて、お客さまとともに描く新しい社会・組織の姿を具体的に発信してまいります。
KDDI Biz Edgeが目指す未来とは?
AIによる要約
DXを成功させる鍵は、ツールの導入そのものではなく、効率化によって生まれた「余白」をどう使うかという目的の腹落ちにあります。KDDI Biz Edgeの落合氏とリンクアンドモチベーションの坂下氏は、トップ自らが変化する姿勢を見せ、対話を通じて組織の停滞感を解消し、自走させる重要性を指摘。インフラやオフィスといった「環境」への投資を、社員の信頼を築く「人への投資」と捉え直すことで、現場のポテンシャルを最大限に引き出し、持続的な事業成長と社員のエンゲージメント向上を両立させる変革の実践論を解き明かします。
目次
<出演者プロフィール>
株式会社リンクアンドモチベーション代表取締役社長
坂下 英樹
1991年に専修大学商学部を卒業し、株式会社リクルート(現:株式会社リクルートホールディングス)に入社。人材総合サービス事業部、組織人事コンサルティング室を経て、2000年に株式会社リンクアンドモチベーション設立に参画し、同社取締役就任。2013年代表取締役社長就任。
KDDI Biz Edge株式会社 代表取締役社長
落合 孝之
大学卒業後、第二電電株式会社(現・KDDI株式会社)に入社。2017年にビジネスIoT推進本部 ビジネスIoT営業部部長に就任し、2022年からは社長付上席補佐を担当。その後、ビジネス事業本部 ビジネスデザイン本部 副本部長 兼 関西支社長を経て、2025年4月にKDDI Biz Edge株式会社代表取締役社長に就任。
DXの停滞を打破する「効率化」のその先
──多くの企業がDXに取り組んでいますが、「ツールを入れたが現場が変わらない」という声も少なくありません。なぜ、現場の行動変容につながらないのでしょうか?
落合孝之(以下、落合) 通信インフラやデバイスを提供する立場として強く感じるのは、ツール導入そのものが目的化してしまっているケースが非常に多いということです。本来、ツールの導入は業務を効率化し、「余白」を生み出すための手段にすぎません。
実は、その「余白を何に使うか」というビジョンこそが重要です。生み出した時間を使って、よりクリエイティブな仕事や新たな価値創造に向かってこそ、真の変革につながります。その先の出口を描かずに導入だけを進めてしまうと、現場からは「また面倒な道具が増えただけ」と受け止められてしまいます。
坂下英樹(以下、坂下) おっしゃるとおりです。最大の問題は、「何のために効率化を行うのか」という目的に腹落ちしていない点にあります。私は、社員から「業務時間が削減できました」という報告を受けても、それだけでは手放しで喜びません。
知りたいのは「では、その空いた時間で何をするのか?」ということ。削減した時間でどのような価値が生まれるのか。そこに本質的なゴールが示されなければ、現場の熱量は上がりません。
落合 一方で、現場には「自分の仕事が奪われるのではないか」「新しいことに対応できない」という不安や抵抗感があるのも事実です。
坂下 だからこそ、効率化は能力開発とセットで考える必要があります。経営層は、単なる数字だけでなく、「その先にある未来像」と、そこへ進むための具体的な支援策を同時に示さなければなりません。
「最大の問題は、『何のために効率化するのか』という目的が腹落ちしていない点にある」(坂下)
「現状バイアス」を溶かすトップの自己変革と共感
──現場の意識を変え、組織のベクトルを揃えるために有効なアプローチとは何でしょうか。
落合 当社のAI活用を例に挙げると、最初は若い社員が積極的に利用するのに、ベテラン層はなかなか使わないという二極化が起きていました。そこで私自身がAIを日常的に使いこなしている様子を動画で全社員に発信しました。「抽象的な問いかけ」に対するAIの柔軟な対応を面白がっている姿などを見せたことで、様子を伺っていた層にも「まずは試してみよう」という腹落ち感が広がり、結果としてAI利用率は9割まで上がりました。
坂下 今の落合社長の行動は、非常に理にかなっています。組織が変わる最初の段階では、今の状態を変えたくないという「現状維持バイアス」が働きます。これを溶かすプロセスを私たちは「アンフリーズ(解凍)」と呼び、そのために有効なのが、トップ自らによる「相対化」と「非公式な接点」です。
「社長も楽しんでいるんだ」「自分の声を直接拾ってくれるんだ」という事実が、個人の固定観念に「揺らぎ」を与え、社員が自ら動く原動力になる。そのような好循環が少しずつ組織を変えていきます。
落合 なるほど、私たちが現場で積み重ねてきたことが、理論的にも裏付けられたようで自信になります。
現在、全国の拠点に足を運び、全社員2,000名との直接対話を続けています。代表就任からスタートして、ようやく850名ほどとの対話が終わったところですが、一人ひとりの声を拾うことの重要性を改めて実感しています。
坂下 まさに、社長自らが動くことや、社員との対話が生んでいる「揺らぎ」こそが重要です。変化への波紋が広がっていくと、ある瞬間に一気に「やるのが当たり前」に変わる「臨界点」が訪れます。一般に、3割〜4割の社員が変化し始めると、組織の変化は一気に加速します。落合社長が今されていることは、まさにその土台作りです。そこから先は、変化を「習慣化」し、組織全体の文化として「集団化(スタンダード化)」していく。このプロセスをいかに設計できるかが、変革の勝負どころですね。
「トップがまず楽しんでいる姿を見せて、ハードルを下げる。これが現場の自走を引き出すスイッチになったと感じています」(落合)
──そうした「揺らぎ」や変化の兆しを、一過性で終わらせないことが重要ですね。臨界点に向かう手応えを可視化し、変革の好循環を回し続けるためにはどうすればよいのでしょうか。
坂下 私たちが提唱しているのが「診断・変革・公表」のサイクルです。まず「診断」で現状を数値化して正しく把握し、次に「変革」として具体的な打ち手を実行する。そして最後に「公表」です。たとえスコアが低くても、課題を認識し改善プロセスを社外へも開示している企業は、そのポテンシャルへの期待から大きな信頼を得られます。
落合 当社でも定期的にエンゲージメントサーベイを実施していますが、私はそのスコアを「組織の健康診断」と捉えるべきだと社員に伝えています。数値で犯人探しをするのではなく、組織の状態を例えるなら「今は少し風邪気味だから、どう治療するか」を自分たちで前向きに議論し始める。現状という事実を直視し、誰かのせいにしない姿勢こそが、自走する組織への第一歩になると確信しています。
環境整備こそが最大の「人への投資」
──意識の変化を受け止める「環境」の力についても教えてください。過去にIT整備が現場の行動を変えた事例はありますか。
落合 例えば、病院の事例があります。かつて院内連絡に使われていたPHSがサービス終了に伴いスマートフォンに置き換わりつつあります。すると、ナースコールや電子カルテと連携できるだけでなく、院外にいるドクターともつながることで情報共有がしやすくなり、現場の作業を減らすことができました。通信手段が変わるとコミュニケーションの質そのものが変わり、結果的に患者さんへの対応品質や診断精度の向上にもつなげられるんです。
臼杵市医師会立コスモス病院の事例では、スマートフォンを全職員の共通基盤とし、現場の情報連携を刷新。働き方の効率化と医療品質の向上を両立させた。
医療・建設・教育・製造業など現場の課題をどう解決した?
──2025年11月にKDDI Biz Edgeが新オフィスへ移転したのも、まさに空間の変化が人の意識や行動を変えた好例ではないでしょうか。
落合 この新オフィスは若手・中堅の社員12名がプロジェクトチームを組んで、1年半かけて自分たちで作り上げたものです。メンバーは什器メーカーを回って自ら勉強し、「どんな会社で働きたいか」を軸にゼロから設計しました。私たち経営陣は会社としての方向性は示したうえで、「具体的な設計には口を出さない、予算だけ見る」と宣言して、全てを任せました。
完成後、出社率は上がり、対話の場が増え、自分たちの環境をアップデートしようとするアイデアが次々と自走し始めたのです。環境作りとは、単なる箱作りではなく、信頼関係の構築そのものなのだと痛感しました。
2025年11月に移転した新オフィスのカフェスペースにて。リラックスした雰囲気の中、対話は深まっていった。
現場力と先端技術の融合で挑む変革。理念を組織の推進力に変えるプロセス
──自社で試行錯誤しながら、「意識を変える仕掛け」と「環境への投資」の両輪を実践してきたプロセスが、今回の新商号にも込められていると伺いました。改めて、「KDDI Biz Edge」に込めた決意を聞かせてください。
落合 2026年4月に「KDDI Biz Edge」に商号を変更します。私たちは、お客さまのIT環境の刷新やオフィス空間の設計を通じて、「組織の意識が変わるきっかけ」をともに創り出してきました。その経験を踏まえ、新商号にはこれまで培ってきた資産と、これから目指すべき姿の両方の想いを込めています。創業以来、私たちは地域密着でお客さまの「困った」をまるごと解決する「現場力」を磨き続けてきました。その姿勢は今後も変わりません。
一方で、ビジネス環境は急速に変化しており、今やStarlink(SpaceX社が提供する高速衛星通信サービス)やAIといった先端技術が、最前線である各現場でこそ不可欠な存在となっています。「Biz Edge」という新商号には、これまで培ってきた「現場力(Edge)」と、これからの武器である「最先端技術(Edge)」を掛け合わせ、お客さまの最前線の変革を支えるパートナーになる、という決意を込めました。
「現場力×先端技術。二つのEdgeで、お客さまの最前線の変革を支えるパートナーへ」(落合)
坂下 「まとめてオフィス」という親しみやすい名前から、「Biz Edge」という鋭さのある名前への転換。ここには、会社のあり方を変えるという強い意志を感じます。
落合 過去を否定するのではなく、カルチャーを受け継ぎながら進化する。社員一人ひとりが「Biz Edge」という新しい看板を背負い、自らも変革の実践者として、お客さまに価値を届けていきたいと考えています。
坂下 新社名に込めた理想の実践と言行一致にしていけるかどうか、それが大きなテーマになるでしょう。過去に成長した企業を見ても、概念を言語化して掲げてきた会社は強い。社名やコンセプトに込めた言葉が社員に浸透し、行動の軸になることで、成長の推進力になります。
当社も「モチベーション」という目に見えないものを大切なものとして掲げ、それをつなげていくという意味で「リンク」を付けました。単に社名に企業の想いを込めるだけでなく、その意味を社員がどれだけ自分のものとして語れるかが重要なんです。
経営の「投資」と現場の「挑戦」を同期させる変革の第一歩
──「意識」と「環境」が調和し、社員の熱量が高まった先に、どのような「はたらく未来」の景色を見据えていますか。また、その展望に向けて、私たちが今日から踏み出すべき一歩とは何ですか?
落合 技術はすさまじいスピードで進化していますが、最後はやはり「人」です。技術は、あくまで人がコントロールするツールであってほしい。技術に任せるところと、自分でクリエイティブに創造するところを見極めないといけません。技術と人がどんどん高め合って、もっと快適に、もっと社会に役立つ環境をつくっていく。
その最初の一歩は、まず動くことです。まずは、身近な環境を変えてみるのもよいでしょう。一歩踏み出したら見える世界が変わる。「環境が変われば自分たちも変化できる」という小さな成功体験を積み重ねることが、大きな変革への唯一の道だと考えています。
坂下 そうして自分たちで環境を変え、主体的に一歩を踏み出した先にあるのは、一人ひとりが自分の仕事の意味を感じられる世界ですね。当社の理念に「意味のあふれる社会」という言葉があるのですが、意味があれば「やらされ感」は生まれません。何のためにやるのかを日々感じられていたら、人は幸せに働けるはずです。
そして経営者の皆さんには、もっと「人」に投資してほしいと伝えたい。投資するからこそ信頼が生まれ、エンゲージメントが高まります。ITインフラやオフィス空間の整備は、まさにその投資の具体的な手段のひとつです。「環境」への投資は、間違いなく「人への投資」になります。
「『環境への投資』は社員への信頼の証。人への投資が信頼を育み、熱量を引き出す」(坂下)
はたらく未来をどう変える?:環境への投資が「自走」と「仕事の意味」を呼び覚ます
DXの本質とは、単にツールを導入することではなく、組織の「意識」と「環境」を同時にアップデートし、現場にポジティブな連鎖を生み出すことにあります。
「効率化の先にある余白をどう使うか」という目的が社員一人ひとりに腹落ちし、それを支える最適なインフラが整ったとき、組織の最前線ではかつてない自走が始まります。組織の「現状維持バイアス」を溶かすのは、華やかな正論ではなく、トップ自らが実践し起こす「空気の変化」であり、社員への信頼を形にした「人への投資」に他なりません。
インフラ刷新やオフィス移転などの「環境」への投資を、単なるコストではなく「人への投資」と捉え直すこと。「環境が変われば自分たちも変化できる」という小さな成功体験を積み重ねることで、働く人は「やらされ感」から解放され、自分の仕事に「意味」を見出すという本来の輝きを取り戻します。
「変わらなければならない」という強迫観念を、「自ら変えていける」という昂揚感へ。KDDI Biz Edgeは、最先端の技術と現場に寄り添う実践の両輪で、お客さまとともに新しいビジネスの未来を切り拓いていきます。
事業のDXやデジタル化を検討中なら、KDDI Biz Edgeにご相談ください
※ 記載された情報は、掲載日現在のものです。




